編集者 藤井さんのコラム

インターネットが進化して(近年はSNSも発達して)、「伝える」ことは技術としてとても簡単になりました。自分が訴えたいこともネットに載せれば数千人、数万人の人たちに届けることが(しかも海や国境を越えて!)できる時代になりました。

でも悩ましいのは、それは技術的に“できるかもしれない”時代になっただけ。それらが本当に“伝えたい人に伝わっている”かどうかは、実は怪しい。もしかしたら、情報はただ単純に量だけが増えて、そのほとんどは一方通行なのかもしれません。はたして、それって「伝える」ことになってる?

「伝える」にはまず「誰に、何を伝えたいか?」と、伝えようとしている張本人(つまり、君たち)が自覚し、一緒に伝えようとしている仲間と意思を共有し、「取材」する相手にその主旨を理解してもらわないと何も始まりません。誰にも共有せず、誰にも「取材」しなければ、それは単なる“独り言”。誰も興味なんて持ってくれません。

誰でも聞くようなことを真似て質問しても、答えてくれる人にとっては退屈なだけ。もちろん質問するだけならメールを一通送れば済んでしまうかもしれないけど、それに答えてくれる人の性格や息遣い、本心は直接話してみないと絶対にわからない。だから、しっかりした準備は必要。答えてくれる人の過去の発言や記事、プロフィール――インターネットってそういうときには重宝するね。ウソも多いけど!――を予習する。そんなことを繰り返してようやく、知りたいことが見えてきたら、きっとすごい感動です。いや、正確に言うとそれって「知りたいと思っていたことがわかった」んじゃなくて、「知りたいと思っていたこと以上のことを人の話から発見した!」ってこと。すると、自分の感動だけで収めていたらもったいない、もっとたくさんの人に知ってもらったり、考えてもらったら、もっともっと楽しいはず!

きっとそれが「伝える」ってことなんじゃないかな、と僕は考えています。

さて、君は何を「伝える」のかな?

 

 

 

 

 

 

藤井 将(ふじい すすむ)

編集者、プランナー。1970年鳥取県鳥取市生まれ。大学卒業後、出版社を転々。20代後半にドロップアウトしてアジア各地を放浪後、30歳で会社員生活に戻る。
出版社勤務後、子育て支援のNPO職員等を経て現在、某生活協同組合に在籍しながら「食と農と平和」をメインテーマにさまざまな媒体編集をプロデュース中。東日本大震災後はとくに福島でのコミュニティづくりに関わり今に至る。
今年の最大関心事は「沖縄」。